縄文時代を応援してくださってありがとうございました。縄文時代、たいへん好きなんですが、実は私は縄文人にだけはなれないなあと思っています。というより、なりたくないです。
なぜかというと、一番イヤなのは抜歯をしなきゃならない。この風習は弥生の前期まで続くから縄文だけじゃないんだけど、縄文前期から始まって、 中期の後半からほぼ全員、後晩期になると全員がやる。 全員が大人になってから歯を抜くんですよ!しかも多い人は3回やる。まず成人式、 15歳くらいですが、関東から東海地方の例だと、下あごの第2犬歯を2本抜きます。 同じムラの出身者と結婚後によそから来た人では、抜く場所が違うんですが、ムラ出身の人は第2犬歯を2本抜く。 どうやって抜くかっていうと、多分縛り付けられて、痛いので…、石かなんか当ててがつんっとやる。とんでもないですよね。 でもそれやらないと一人前のおとなとして認めてもらえないんですね。これは通過儀礼のひとつですから、痛くてもガマンしなきゃならない。 次は結婚したときです。所帯をもって、竪穴住居かなんか新築するのに、みんなで手伝ってくれて、 よその地域から例えば長野県とか千葉県とかからお嫁さんもらうんですよ。 だいたいよそからもらいますから、縄文時代は。で、結婚します。みんなから「おめでとう!」って云われて、また抜歯(笑)。今度は上の第2門歯、2本やります。 また縛り付けられて、石かなんかで、がつん。で、それでようやく無事結婚です。それから子供も生まれて、子育ても終わり、50歳くらいになったら、貝輪とか、でかい耳飾りつけて、 みんなに敬ってもらって、「長老!」なんていわれるようになるんだけど、その前に、抜歯が待ってる(笑)。いや長老になると今度は抜歯じゃなくて叉状研歯っていうのをやります。 これは抜くんじゃなくて前歯をフォークみたいに削ります。東大の総合博物館に展示してあります。 がりがり削ってフォーク状にします。すごいしみると思うんですけどね、それをやって尊敬してもらう。そういう世界です。 縄文は、これがあるので私はちょっと勘弁してくださいってことです。(小林)
 

 旧石器時代に票を入れてくださってありがとうございました。対決が終わったので、私もいろいろ話しますけど。なかなか理解されにくい、石しか出ない、日本列島だとそうなんですけど、海外に目をむけると、いろいろな装飾品とか、お墓とか、多様な生活文化を持っていることがわかります。それらを利用しながら、日本の研究者は石器だけの世界をいろいろ想像していくのが我々の研究になるわけです。その中で、狩猟採集民の研究も参照するわけです。さっき、女性は楽だったというお話をしましたが、ホントはそう甘くはないかもしれない。旧石器は狩猟依存度が高いといいましたが、狩猟した動物の皮も盛んに利用します。そのためには皮なめしをしなくちゃならない。毛皮をなめして衣類にしていく。今もイヌイットというような北米の寒いところに住んでる人達は皮なめしをする。これ女性の役割なんですけど、噛むんですね。歯でね。歯で柔らかくして皮なめしをするので、歯、ぼろぼろになります。みんななくなっちゃう。エナメル質なんかも擦り切れちゃって、しみちゃうでしょうね。でも家族のために、衣類の皮なめしをして、たくさんの皮製品を作っていく。狩猟にでている男性を待つ間、前の狩猟で獲って来た皮を、ひたすら噛んでなめす。それが女性の大きな役割だった。そうでないと寒い氷河期を乗り切ってこれなかったのかなと思います。男性は狩り!女性は歯がぼろぼろ!みたいな、そういう社会であったことが想像されます。そういう寒冷期をうまく生き抜いたんですね、それがあって、縄文人につなげていったということなんだろうと思います。少し、旧石器時代への理解が深くなっていただいたということであれば、今日のお話をして良かったと思います。ありがとうございました。(長ア)