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(2)歯で分かる年齢
歯には様々なデータが潜んでいます。生活習慣や歯の病歴、遺伝情報などいろいろありますが、年齢もそのひとつです。
年齢によって歯の状態は刻々と変化します。乳歯(にゅうし)が生える年齢や、永久歯(えいきゅうし)へ生え変わる年齢はだいたい決まっています。永久歯が生えそろった後も、食べ物を噛むことで歯が磨り減るので、磨り減りの度合がその人の年齢を表します。
遺跡で発見された人骨について、歯を調べることは、死亡年齢を推定するうえで有効な方法の一つです。特に幼〜少年期の場合、乳歯や永久歯の生える平均的年齢をもとに「○歳前後」とだいたいの年齢を推定することができます。大人の場合は磨り減りの度合から年齢を推定できますが、食生活の違いなどで磨り減りの度合も変わるので、時代による差や個人による差を考えなくてはならないので、「○○代の前(後)半」くらいの推定になります。
下の表は、市内のいくつかの横穴墓で発見された埋葬人骨について、骨や歯を調べて、性別や概ねの年齢を推定したものです。このなかで※印の付いた2例(出山・野水端横穴墓群)は幼〜少年期で、歯が良く残っていたので、乳歯や永久歯の状態からだいたいの年齢がわかりました。
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横穴墓群 |
墓番号 |
性別 |
推定年齢 |
磨り減り |
出山横穴墓群 |
8号墓 |
男性 |
36〜40歳(壮年後半) |
U〜V |
男性 |
31〜35歳(壮年前半) |
U〜V |
女性 |
21〜25歳(青年前半) |
T〜U |
男性? |
※8歳前後 |
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野水橋横穴墓群 |
3号墓 |
男性 |
41〜50歳(熟年前半) |
V |
性別不詳 |
※3歳前後 |
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羽根沢台横穴墓群 |
7号墓 |
男性 |
36〜40歳(壮年後半) |
U |
御搭坂横穴墓群 |
8号墓 |
男性 |
31〜33歳(壮年初め) |
U |
男性 |
31〜35歳(壮年前半) |
U〜V |
9号墓 |
性別不詳 |
36〜40歳(壮年後半) |
U |
女性? |
34〜36歳(壮年半ば) |
U |
( )内は鑑定の用語で、これを基に年齢の範囲を記述しました。目安は以下のとおりです。 |
幼児期:5歳以下、少年期:6〜12歳、思春期:13〜20歳、青年:21〜30歳、壮年31〜40歳、熟年:41〜60歳、老年:61歳以上 |
歯の磨り減りはTからVへ磨り減りの度合が大きくなります。 |
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次の表は乳歯及び永久歯の生える平均的な年齢を、図は永久歯の生える順序を示しています。該当する年齢のお子さんがいたら、確かめてみてください。
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上顎 |
歯 種 |
大臼歯V |
大臼歯U |
大臼歯T |
小臼歯U |
小臼歯T |
犬歯 |
側切歯 |
中切歯 |
平均
萌芽
年齢 |
乳歯 |
- |
- |
- |
23〜26ヶ月 |
15〜20ヶ月 |
17〜20ヶ月 |
8〜11ヶ月 |
7〜8ヶ月 |
永久歯 |
18歳以上 |
13.0歳 |
6.5歳 |
11.0歳 |
9.0歳 |
11.5歳 |
8.5歳 |
7.5歳 |
下顎 |
歯 種 |
大臼歯V |
大臼歯U |
大臼歯T |
小臼歯U |
小臼歯T |
犬歯 |
側切歯 |
中切歯 |
平均
萌芽
年齢 |
乳歯 |
- |
- |
- |
23〜26ヶ月 |
15〜20ヶ月 |
16〜19ヶ月 |
8〜11ヶ月 |
7〜8ヶ月 |
永久歯 |
18歳以上 |
12.0歳 |
6.0歳 |
11.5歳 |
10.5歳 |
10.0歳 |
8.0歳 |
7.0歳 |
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『古人骨は語る』
片山一道(角川書店 1999)より |
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→(3)歯に見られる遺伝(いでん) |