低湿地遺跡とは

 通常の遺跡では、木製品や種子などの有機質遺物は、時間の経過と共に分解しほとんど残ることはありません。有機質が分解するのは、主に微生物と酸素の働きによりますが、低湿地遺跡では泥炭層の堆積によって遺物が空気から遮断される環境に置かれるため、有機質遺物は長い間分解されず、保存されたまま出土します。 

 丸山B遺跡では、大量の加工された材が、泥炭層の下部から出土しています。材には石斧で加工された痕跡を残すものや、楔(くさび)によって打ち割られ、板状に加工されたものもありました。金属器を持たなかった時代に、丸太から板材を取り出すためには、楔による高度な技術が開発され、伝承されていたものと考えられます。

 またクルミやクリなどの植物資料や、シカやイノシシの骨など、当時の食料を直接知ることのできる貴重な資料も出土しています。樹皮を残した自然の材や、昆虫の骨など、遺跡の傍で生育していた生物の遺体を今後分析することによって、当時の植生や環境が正確に復元できる可能性があります。




加工された材の出土




出土したクルミ・トチの果皮




ウィグルマッチングによる年代測定のためのサンプル採取