mt-DNAの分析結果

 羽根沢台横穴墓群の9・12号墓の埋葬人骨のうち、7体の成人骨についてmt-DNA分析を行いました。
 分析の結果、縄文人に多く見られるハプログループ(DNA配列の集まり) であるM7aが9号墓で、渡来系弥生人に多くみられるD4(D4b)が9・12号墓でそれぞれ確認されました。同一横穴墓群内で縄文系、弥生系の双方が見いだされ、D4に属する人骨が多いことは、今後、日本人の形成過程を考える上で興味深い結果となりました。

資料提供:梶ヶ山真里(国立科学博物館)
※羽根沢台横穴墓群9号墓の埋葬状況
 A群人骨は玄室奥に集骨され、B群人骨が中央、C群人骨が手前に各々伸展葬で安置されていました。
 埋葬はA→B→Cの順に行われたと考えられます。
※羽根沢台横穴墓群12号墓の埋葬状況
 B・C・D群人骨は玄室隅に集骨され、中央にA群人骨が伸展葬で埋葬されていました。
 埋葬はD→C→B→Aの順に行われたと考えられます。  

展示人骨の特徴

展示会では下記の2体の人骨を展示しました

羽根沢台横穴墓群9号墓C人骨 羽根沢台横穴墓群12号墓C人骨
mt-DNA分析で縄文人に見られるハプログループM7aが検出されている。 mt-DNA分析で渡来系弥生人に見られるハプログループD4が検出されている。
30代の男性で推定身長は160p。
狭頬型の顔立ちで、眉付近の隆起が強い。
腕や脚が比較的細い。歯の咬み合わせが鉗子状(毛抜き状)で、縄文人系統の特徴と捉えられます。
30代の女性で推定身長は160pと高い。
小顔で、眉付近の隆起はなく、おでこが垂直に立ち上がる幼児型の顔立ち。比較的平坦な顔面や高身長は渡来系弥生人の系統の特徴とされています。

横穴墓出土の副葬品



 一般的に横穴墓は同時期の古墳(高塚古墳)に較べて、副葬品が少ないといえます。しかし、横穴墓で発見された副葬品であっても、一般庶民が所有するものではありません。
 三鷹市内の横穴墓からも、数は少ないものの、副葬品が発見されています。これらは埋葬された人々が生前に愛用していたものや、葬儀に際して当時流通していた高価なお供えものと考えられ、横穴墓の被葬者と当時の社会を考える上で重要な資料です。

横穴墓の被葬者

 三鷹市内の横穴墓の調査で、これまでに判明したことから、その被葬者像につながる情報を整理すると次のようになります。
1 数は少ないが、庶民が持っていない高級品が副葬され ている。
2 肉体労働をしていない男性が存在する。(特権的身分?)
3 食生活は豊かだったらしい。(重度の虫歯になっている)
4 女性や幼児が埋葬されている。
 7世紀後半(飛鳥時代)は、都のあった奈良では聖徳太子や天智天皇が活躍していた頃ですが、このころの社会を考えると、横穴墓の被葬者は、
 
 
周辺を治める有力者層(その家族を含む)
 
 と捉えることができ、「天文台構内古墳」を盟主とする中間層であることが推測されます。
 今後、彼らの集落や生活圏の推定、横穴墓群相互の関係、多摩川沿いにある古墳群との関係などに関する解明を行う予定です。