その1 出山横穴墓群8号墓

特異な埋葬状況
 出山横穴墓群8号墓(東京都指定史跡)の玄室内では、特異といえる埋葬状況が確認されました。
 埋葬人骨は8歳程度の男児(A)、40代の男性(B)、30代の男性(C)、20代の女性(D)の全4体です。これらは順を追って埋葬(追葬)されたと考えられますが、このうちBの腰部分はAの脚の上に重なっています。
 多くの横穴墓では、最終埋葬骨が体を伸ばした姿勢(伸展葬)で、それ以前の埋葬骨は玄室の隅などにまとめられて発見されますが、出山8号墓では全員が伸展葬で、さらに遺体を重ねて安置したことは極めて希少な例といえます。

●A人骨は乳歯の状態から8歳程度、頭骨の特徴から男児と思われる。
●C人骨の腰あたりは完全にB人骨の脚に重なっている。
●C人骨とD人骨は体の骨が似ていることから兄妹の可能性がある。


埋葬人骨に見られる歯周病
 出山8号墓のC人骨には極めて悪化した歯周病の痕跡が確認されました。上顎の右側の犬歯と左側の第一大臼歯です。穀類、肉類、魚類と様々な食物を食べることは歯周病の原因となりますが、歯磨きによって発病の危険性は抑えられます。 しかし、おそらくは歯磨きの習慣がない古墳時代において、この人物が生前に豊かな食生活を送ったことが発病につながったのではないでしょうか。