多摩川が、野川から今の場所に移動した時期とスピードは?
現在武蔵野台地にみられる河川は、そのころの古多摩川の河道底部となっていた礫層の凹地地形に、引き続き水が流れ続けているもので、多摩川の残り川ということができます。
野川の位置に古多摩川が流れていた時期は、野川近辺のローム層の古さを調べることで知ることができます。
8月の上旬に、大沢の武蔵野の森公園で遺跡調査を行いましたが、その際の所見では、およそ3万年前の層の直下に、当時の河道である礫層が確認されましたから、この時期まで古多摩川が大沢辺りに流れていたものと思われます。
さらに南の地点を探すと、味の素スタジアムの近辺(調布市)で行われた発掘調査のデータでは、およそ2.5万年前のローム層の直下に礫層が確認されています。さらに府中崖線と呼ばれる多摩川沖積地近くの台地縁辺では、1万5千年ほど前のローム層の直下に礫層があり、南下するにしたがって、ローム層が薄くなっていることが判ります。
現在の多摩川の氾濫原でもある沖積地は、およそ1万ほど前から形成されたと考えられていますので、野川から現在の多摩川まで、このあたりではおよそ2km程度ある距離を、2万年近くかけて多摩川が移動していったことになります。