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新企画 横穴墓の被葬者の身体測定!?目次へ戻る
 
第1部 歯から見た被葬者(ひそうしゃ)
(4)死後に失った歯の謎
まとめられた骨
 羽沢台横穴墓群7号墓には30代後半の男性が1人だけ埋葬されていました。発見された時、全身の骨はまとめられて頭蓋骨だけが近くに転がっていました。横穴墓では、次の埋葬者を安置するために、既に骨化した先の埋葬者の骨をまとめることがあります。しかし7号墓の場合は埋葬された人は1人で、追葬(ついそう:後から次々に埋葬すること)は行われていません。何のために骨がまとめられたのでしょうか。謎です。
羽根沢台横穴墓群7号墓の埋葬人骨(右上は墓内における位置)
 
失われた歯
 さらに謎は深まります。埋葬人骨の歯は7本が失われていました。生前に歯が抜けると、顎(あご)の骨にある歯の根が埋まっていた穴がだんだん閉じてきます。この人骨の場合、7本のうち1本は穴が閉じていて生前に抜けたもの、他の6本は穴が開いたままでしたので、死後に失ったものと考えられます。
 ところで下の図は先の話を表したもので、歯の並びを表した「歯式(ししき)」といいます。歯医者さんが患者さんを見るように、正面から見た図になっていて、上下の顎とも中央から1〜8の番号で歯が表現されています。
 図の上顎右8は生前に、上顎の左右とも2・3・4が死後に失ったものです。歯の鑑定を行った歯科医は、残っている歯は丈夫で歯の抜けた部分だけ歯周病で弱っていたとは考えにくく、特に上顎の3は死後に自然に抜けるはずがないと言っています。発掘調査では墓内に1本の歯も落ちていませんでした。また、上顎の骨の端には溝状の傷が見られ、歯を抜いた痕跡とも考えられます。もし抜かれたのであれば、誰が、いつ、何のために死者の歯を抜いたのでしょうか?
     歯式
(向かって左) (上顎) (向かって右)
  7 6 5 1 1 5 6 7 ×
8 7 6 5 4 3 2 1 1 2 3 4 5 6 7 8
(下顎)
  ○:歯の根の穴が開いている(死後に失った)    
  ×:歯の根の穴が閉じている(生前に失った)    
上顎の歯の状況

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