古人骨は意外と語る!

   講師 梶ヶ山真里さん(国立科学博物館)

 こんにちは!私はふだん筑波にある国立科学博物館で、ほとんど毎日、運び込まれた人骨と資料庫の中で向きあって調査をしています。人骨の形質的な調査を主にやっていて、「形質人類学」という分野になります。調査した人骨の数は、科博にある約10,000体の人骨のうちの7,000体くらいの調査に関わらせていただいています。
 三鷹市は1980年代の早くから、すべての人骨を当博物館に研究資料として保管させてもらっていますので、もう40年近いおつきあいがあります。自治体の中には、出土した人骨の処分に困って焼却してしまうところもあるので、三鷹市の対応は貴重ですね。一研究者として三鷹市のみなさんには感謝申し上げます。
 今日は皆さんに、人骨からどんなことがわかるのか?という説明をします。人骨は意外と語ってくれるんですよ。

 古人骨は意外と語る!24歳まで背は伸びる!2年で骨は入れ替わる!

 人間の骨は24歳くらいまでは大きくなります。つまり個人差はありますが、24歳まで身長が伸びることになります。また骨は使い方に応じて変化します。骨髄と骨の細胞が常に作りかえられていて、約2年で全ての骨が新しい細胞に変わります。知っていましたか?
 このコーナーでは4つのテーマにわけて、古人骨に語ってもらうことにします。
1 人骨研究から何がわかるのか?
2 環境と文化が骨に与える影響について
3 骨からみた日本人の時代変遷
4 古墳時代の三鷹市民が果たした人骨研究に果たした役割について


講師紹介

国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ勤務
 専門(形質人類学)
 国立科学博物館の山口敏先生に師事し、形質人類学の教示を受け、現在は遺跡から検出される人骨の鑑定報告・整理・保管という基礎研究を行う。科学博物館収蔵の骨10,000体のうち、7,000体の調査に携わる。
 論文 2016「横穴墓出土人骨研究の動向」考古学論究18 立正大学考古学研究室 等多数

―骨をみれば一目でその違いがわかる―
 −新宿区市谷加賀町二丁目遺跡出土の縄文人骨鑑定のエピソード−
 平成25年に新宿区市谷(火山灰の台地上遺跡)で見事な全身骨格が複数出土した。火山灰である関東ローム層では、人骨は十数年で完全に分解されてしまうのが通常のため、縄文時代の遺跡であったにも関わらず、当初人骨は縄文の骨が残るはずもなく、現代人のものではないか?と現場では推測されていた。しかし梶ヶ山さんは、発掘現場に到着し骨を一目見るなり、縄文人の骨であることを見破ったというエピソードが伝えられている。骨をみれば一目でその違いが解る。と言われたそうです
 時代と文化が骨に与えた影響と、日本人の骨格の変遷について、その違いのポイントについて等、講演会の内容をまとめた展示バージョンです。


  

  

講演会当日のようす 2016年9月3日