人体文(上段)とサンショウウオのような文様(下段)
縄文時代中期勝坂式 原遺跡出土

  縄文土器の特徴のひとつは、抽象的なモチーフの文様が多いことです。人体や動物を彷彿させるモチーフも、具体的な姿としては表現されず、対象の強調や省略が大胆に多用されています。首から腕が伸びる人体やサンショウウオに見える動物は、神話に登場する隠喩に満ちた存在として、現実の姿とは異なるように描かれたのかもしれません。文字を持たなかった時代、神話のヒーローを「焼き物」という形で現実に存在させることで、そのメッセージを集団で継承し、再確認していたと考えるのが物語性文様という考え方です。