墓前域充填土断面(縦断)
墓前域充填土断面(横断)
須恵器片の出土状況
須恵器平瓶(復元)
須恵器平瓶実測図
出山横穴墓群8号墓羨門付近
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「当該文化財の特徴及び指定理由」

 本遺物は出山(でやま)横穴墓群8号墓(東京都指定史跡)の墓前域(ぼぜんいき)から出土した須恵器(すえき)の平瓶(ひらべ)である。出土破片が全体の4割程を占める半完形個体を、類例を参考に頸部などを加えて完全に復元したものである。体部最大径は17cm、体部高さは13cmを測る。
 体部の形態などから、7世紀中葉に東海地方東部で製作されたと思われる。8号墓の出土遺物の中では唯一年代の明らかなものとして、墓の築造年代の推定に重要な役割を担い、同墓の東京都史跡の指定に大きく関わった資料である。
 平瓶の用途は酒器とも考えられているが、本遺物は墓前域の羨門(せんもん)上部付近から出土したことから、墓前域がある程度埋没した段階で、追葬(ついそう)もしくは墓前における祭祀(さいし)などを行った際に、羨門上部の傍らへ寄せられたものと考えられる。
 多摩地方の横穴墓における平瓶の出土例は希少で、当時の物品の流通や、横穴墓の追葬及び墓前における祭祀などを考える上で極めて貴重な資料といえる。

                     『三鷹市教育委員会 文書』より

補注1:本指定品の詳細
 体部全体はソロバン珠様で、上面は膨らみを有し、中央に粘土板の貼付け跡が認められる。径1.6cm程のボタン状円付文が1点あるが、元は2点あったものと思われる。肩部にはわずかながら稜が見られる。体下部は半球状で、ヘラ削り調整によるロクロ目が明瞭である。胎土は灰白色で細かな黒・白色粒を多く含む。焼成は堅緻で、体上部から肩部までに灰黄褐色の自然釉が見られる。これらの特徴から、東海地方東部で7世紀中葉に製作されたものと考えられる。
 なお、保存・公開施設内に、本指定品のレプリカを展示している。

補注2:須恵器及び平瓶(ひらべ)について
 須恵器は、灰色に焼成された硬質の土器で、古墳時代から平安時代にかけて使用されていた。坏、高杯、蓋、皿、椀、器台、甕、壺、瓶などの器種があり、このうち瓶(へい)は、壺形で体部に短い口頸が付けられたものを指す。平瓶は偏平な球状の体部に、頂部から脇にずれた位置に短い口頸を付けたものである。
 なお、東京都内の横穴墓における、平瓶の出土例は少ない。

補注3:副葬品と遺跡の年代決定について
 副葬品とは埋葬の際に遺体に副えた品で、内容や量などを調べることで、埋葬の年代、被葬者の地位、当時の風習などを知る上での重要な資料となる。
 出山横穴墓群8号墓では本指定品及び土師器片(年代不明)が出土したが、唯一年代の分かる資料として、本品の生産年代(7世紀中葉)を基に、器としての使用期間、追葬時の副葬品であることなどを考慮し、墓の築造年代を7世紀後半〜末期と推定した。

補注4:追葬について
 古墳の横穴式石室や横穴墓では、1遺体を埋葬した後に次々と追加して埋葬を行うことが大きな特徴となっており、これを追葬と呼ぶ。
 出山横穴墓群8号墓の埋葬遺体は4体であり、墓前域の土層堆積状況や、羨門(墓の入口)閉塞石の積み方などからも追葬の痕跡が確認されている。
発見場所 三鷹市大沢二丁目17番(崖線の中腹)
発見年月日 平成5(1993)年5月12日
土地所有者 箕輪 清
発掘主体者 三鷹市遺跡調査会
発見の経緯  野川左岸の国分寺崖線には多くの横穴墓が立地し、市内大沢地区においては7群が数えられる。出山横穴墓群では、これまでに伝承を含め10基の横穴墓が確認されており、8号墓は昭和54(1979)年に土地所有者により一部が発見され、その後の平成5(1993)年に、市教育委員会が主催する文化財展示会の一環として発掘調査が行われた。
出土状況  8号墓は崖斜面のほぼ中間の高さに位置する。狭長に掘削された墓前域を有し、羨門には石積みが施され、玄室内部は前後室に区分されるなど数多くの形態的特徴を備えている。
 本遺物は墓前域内で7点の破片として出土している。出土位置は羨門の手前、墓前域の北東隅付近の半径1m程の範囲内であり、1〜8層に分層された墓前域充填土の最上層である1層(黒褐色土)及び直下の2層(暗褐色土)からの出土である。出土位置が閉塞石より高い位置にあたることから、本遺物は最終の追葬後、閉塞石の上部まで充填土が堆積した段階で持ち込まれた器と考えられる。
 7点の破片は平瓶の体部にあたり、頸部は含まれていない。また、これらに伴い土師器片1点も出土しているが、小片であり、器種、年代等は不明である。
掲載文献 ●三鷹市教育委員会・三鷹市遺跡調査会 1997『東京都指定史跡 出山横穴墓群8号墓U』三鷹市埋蔵文化財調査報告第19集
●三鷹市教育委員会 1996『東京都指定史跡 出山横穴墓群8号墓T』三鷹市埋蔵文化財整備報告第1集
その他  出山横穴墓群8号墓は平成6(1994)年3月に東京都史跡に指定され、その後の保存整備事業により保存・公開施設が建設され、平成8(1996)年5月より一般公開されている。
3 三鷹市文化財専門委員会答申全文
2 周辺状況

名称 出山横穴墓群8号墓出土の古墳時代後期須恵器(平瓶)


1 指定内容

種別 市重宝第22号(三鷹市文化財保護条例第5条第1号)考3号
(有形文化財・考古資料)
員数 1点
保管先 三鷹市新川三丁目7番9号
埋蔵文化財調査室
所有者 住所 三鷹市野崎一丁目1番1号
氏名 三鷹市
管理者 住所 三鷹市下連雀九丁目11番7号 三鷹市教育センター
氏名 三鷹市教育委員会
指定日 平成16年4月7日
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